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【相続・信託・後見】第6回 後見人に求められること:成年後見人の役割と責任

後見人に求められること:成年後見人の役割と責任

 

成年後見制度は、判断能力が低下した方の生活や財産を守るための制度です。
その中心となるのが「成年後見人」です。
成年後見人は、本人(被後見人)をサポートし、財産管理や法律行為を行う重要な役割を担います。
本記事では、成年後見人に求められる役割や責任について詳しく解説します。

 

1. 成年後見人とは?

成年後見人とは、判断能力が不十分な方(被後見人)を法律的に支援する人のことです。
家庭裁判所によって選任され、被後見人の財産管理や生活の手続きを代行します。

 

成年後見制度の3種類

成年後見制度には、被後見人の判断能力の程度に応じて以下の3種類があります。

後見(成年後見):判断能力がほぼない方(例:重度の認知症など)
保佐(保佐人):判断能力が著しく不十分な方(例:中程度の認知症など)
補助(補助人):判断能力が不十分な方(例:軽度の認知症など)

いずれの制度でも、家庭裁判所の監督のもと、成年後見人・保佐人・補助人が本人を支援します。

 

 

2. 成年後見人の主な役割

成年後見人は、被後見人の財産管理や生活の手続きを行います。
具体的な役割は以下の通りです。

 

(1) 財産管理

被後見人の財産を適切に管理し、生活を維持するための資金を確保します。

– 預貯金の管理や引き出し
– 年金や保険金の受領・管理
– 不動産の管理・売却(裁判所の許可が必要)
– 公共料金や税金の支払い

 

(2) 身上監護(生活支援)

被後見人が適切な生活を送れるように支援します。

– 介護サービスの契約・手続き
– 医療機関との連携(入院手続きなど)
– 施設入居の契約
– 被後見人の意思を尊重した生活の支援

 

(3) 法律行為の代理・同意

被後見人が自分で判断して契約できない場合、成年後見人が代理で契約を行うことができます。

– 重要な契約(賃貸契約、売買契約など)の締結
– 遺産分割協議への参加
– 悪徳商法や詐欺からの保護(契約の取消しなど)

 

3. 成年後見人の責任

成年後見人には、法律的・道義的に重い責任が課せられます。

 

(1) 善管注意義務(善良な管理者の注意義務)

成年後見人は、通常の管理者として慎重に財産を管理し、被後見人に損害を与えないよう努める必要があります。

 

(2) 被後見人の意思尊重義務

成年後見人は、被後見人の希望や意向を最大限尊重しながら支援を行う必要があります。

 

(3) 家庭裁判所への報告義務

成年後見人は、財産管理や支援内容について定期的に家庭裁判所へ報告しなければなりません。

 

(4) 利益相反行為の禁止

成年後見人は、自分の利益のために被後見人の財産を使用することはできません。
例えば、被後見人の財産を無断で売却したり、個人的な目的で使用したりすることは禁止されています。

 

 

4. 成年後見人の選任と手続き

成年後見人は、家庭裁判所の審判によって選任されます。

 

(1) 申立ての流れ

1. 申立人の決定:配偶者や子ども、親族、行政書士・弁護士などが申立て可能
2. 家庭裁判所へ申立て
3. 調査・審問(医師の診断書や家庭裁判所の審査)
4. 成年後見人の選任決定
5. 後見開始(家庭裁判所の監督のもと活動開始)

 

(2) 成年後見人の候補

親族後見人:家族や親族が成年後見人となるケース
専門職後見人:行政書士、弁護士、司法書士が後見人を務めるケース
法人後見人:社会福祉協議会やNPO法人などが後見人となるケース

 

5. 成年後見制度の課題と代替手段

成年後見制度には、いくつかの課題もあります。

 

(1) 制度の硬直性

成年後見制度は、家庭裁判所の監督が厳しく、財産の自由な活用が難しいことがあります。
例えば、不動産の売却には裁判所の許可が必要になるため、迅速な対応が難しくなることも。

 

(2) 費用負担の問題

成年後見人には報酬が発生する場合があり、特に専門職後見人を利用する場合は負担が大きくなります。

 

(3) 代替手段としての家族信託

成年後見制度の硬直性や費用負担を避けるため、近年では「家族信託」を活用するケースが増えています。

家族信託は、財産の管理を信頼できる家族に任せる仕組みで、成年後見制度よりも自由度が高い。
– 認知症対策として、事前に信託契約を結んでおくことで、成年後見制度を利用せずに財産管理が可能になる。

 

6. まとめ

成年後見人は、判断能力が低下した方の生活や財産を守る重要な役割を担います。
財産管理や生活支援を適切に行い、家庭裁判所の監督のもと責任を果たさなければなりません。

ただし、成年後見制度には硬直性や費用負担の問題があるため、家族信託などの代替手段と比較しながら、自分や家族に適した方法を選ぶことが重要です。
専門家に相談しながら、最適な支援体制を整えていきましょう。

 

 

参照記事等

成年後見はやわかりのウェブサイト「成年後見人等の選任と役割
(最終閲覧2025年4月27日)

市民後見センターきょうとのウェブサイト「後見人の責任と役割
(最終閲覧2025年4月27日)

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