就労継続支援B型の指定基準
はじめに
就労継続支援B型は、障害をもつ方々が、一般企業での雇用が難しい場合でも、働く機会を提供するための重要な福祉サービスです。
このサービスは、障害をもつ人々が有する可能性を引き出し、自立をサポートするために欠かせない仕組みとなっています。
多くの人々が、障害や健康状態により一般の労働市場での雇用が困難な状況にある中、就労継続支援B型は、そうした方々にとって希望の光となる存在です。
この記事では、就労継続支援B型の指定基準について、わかりやすく解説していきます。
事業者が守るべき基準を詳しく知ることで、障害者の支援がより充実し、適切な運営を行うことが可能となるでしょう。
1. 就労継続支援B型サービスとは?
1-1. 内容
就労継続支援B型サービスは、一般の企業での雇用が難しい障害者に対して、仕事の場を提供することを目的としています。
利用者は、訓練や作業を通じて自分のスキルを高め、社会とのつながりをもちながら働くことができるようになります。
このサービスを利用することで、障害者は仕事を通じて達成感を味わったり、自信を深めたりする機会を得られます。
一般的には、農作業や軽作業、物品の制作などが行われ、利用者一人ひとりの能力や興味に応じた作業が提供されます。
1-2. 対象者
就労継続支援B型の対象者は、障害や高齢、健康状態などの理由から、一般の企業に就労することが困難な方々です。
具体的には、次のいずれかに該当する者です。
①就労経験がある者であって、年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難となった者
②50歳に達している者、または、障害基礎年金1級受給者
③上記①②に該当しない者であって、就労移行支援事業所等によるアセスメントにより、就労面に係る課題等の把握が行われている本事業の利用希望者
④障害者支援施設に入所する者については、指定特定相談支援事業者によるサービス等利用計画案の作成の手続きを経たうえで、市町村が利用の組み合わせに必要性を認めた者
特に、一般企業における労働が厳しい方でも、このサービスを通じて社会参加を果たし、自分のペースで働くことができる点が重要です。
サービスの提供は、利用者の個別の状況に応じて柔軟に行われます。
2. 就労継続支援B型サービスの人員に関する基準
2-1. 職業指導員
-職務内容: 職業指導員は、個別支援計画に基づき、就労の機会の提供や職場実習の開拓をおこないます。一般就労後も、職場定着を図るための支援をおこないます。
具体的には、作業手順の説明や作業環境の整備、安全対策の指導などを行います。
利用者の能力に応じて仕事を振り分け、適切なペースで作業ができるよう配慮します。
また、利用者のスキルアップを図り、より複雑な作業に挑戦できるよう、段階的な支援も提供します。
-配置基準: 利用者10人または7.5人に対し1名以上を配置します。
2-2. 生活支援員
-職務内容: 生活支援員は、個別支援計画に基づき、日常生活の支援をおこないます。
例えば、食事の介助や身の回りの世話、移動の支援などが主な業務です。
また、利用者が快適に過ごせるように、心のケアや相談にも応じます。
生活支援員は、利用者が安心して作業を行える環境づくりをサポートする役割を持ちます。
-配置基準: 利用者10人または7.5人に対し1名以上を配置します。
なお、職業指導員と生活支援員の総数は、常勤換算で、利用者数を10で除した数以上、かつ、職業指導員と生活支援員の数がそれぞれ1人以上となります(1人以上は常勤)。
2-3. サービス管理責任者
-職務内容:サービス管理責任者は、アセスメントをおこない、利用者が自立した日常生活を営むことができるように適切な支援内容を検討したうえで、個別支援計画の作成、モニタリングなどをおこないます。
また、利用者の心身の状況、環境等に照らし、利用者が自立した日常生活を営むことができるように定期的に検討します。
そして、自立した日常生活を営むことができると認められる利用者に対し、必要な支援をおこないます。
-配置基準: 利用者60人に対し1名以上を配置します。
利用者60人以下 | 1名以上 |
利用者61人以上 | 1名に、利用者が60人を超えて、40又はその端数を増すごとに1名を加えて得た数以上 (例) 利用者数61人 → サビ管2名以上 利用者数101人 → サビ管3名以上 利用者数141人 → サビ管4名以上 |
※1人以上は常勤
2-4. 管理者
-職務内容: 管理者は、職員の管理、就労継続支援B型の利用の申込みの調整、業務の実施状況の把握その他の管理を一元的におこないます。
また、事業所の職員に対し、法令等の規定を遵守させるために必要な指揮命令をおこないます。
-配置基準: 原則として管理業務に従事するもの(管理業務に支障がない場合は他の職務の兼務可)
3. 就労継続支援B型サービスの設備に関する基準
3-1. 訓練・作業室
・利用者へのサービス提供に支障がない広さを確保し、訓練・生産活動等に必要となる器具備品を備えること。
・部屋の広さについては、利用者1人あたり、3.3㎡で算出すると余裕のある配置ができるものであり、少なくとも、利用者1人あたり2㎡以上を確保すること。
・区画に十分な程度の高さがあり、固定されたパーテーションにより間仕切りをすること。
3-2. 多目的室その他運営上必要な設備
・部屋の広さについては、利用者1人あたり、3.3㎡で算出すると余裕のある配置ができるものであり、少なくとも、利用者1人あたり2㎡以上を確保すること。
・相談室と多目的室は、利用者の支援に支障がない場合、兼用することができる。
3-3. 相談室
・室内における談話の漏洩を防ぐための措置を講じること。
・プライバシー配慮の観点から、訓練作業室を通らないで相談室へ出入りできるよう、部屋の配置や導線等に配慮すること。
3-4. 洗面所・便所
・利用者の特性に応じたものであること。
・洗面所および便所は、雑居ビル等においては他のテナントとの共用ではなく専用とすること。
4. 共同生活援助の運営に関する基準
4-1. 生産活動に関する事項
①工賃=「生産活動収入」-「必要経費(例:原材料費)」
②利用者1人につき、1月当たりの工賃の平均額は3,000円以上
③工賃水準の向上に努めること。
④事業者は、年度ごとに工賃の目標水準を設定し、当該工賃の目標水準及び前年度に利用者に対し支払われた工賃の平均額を、利用者に通知するとともに、都道府県に報告しなければならない。
4-2. 生活介護事業所の運営基準
・個別支援計画: サービス管理責任者を配置し、個々の利用者について、アセスメント、個別支援計画の作成、継続的な評価(モニタリングは6月に1回以上)等を通じ、サービスの内容と実施の手順に係る責任を明確化する。
・食事の提供: 利用者に対する事前説明及び同意を前提として、事業所の選択により、食事を提供できることとする。また、提供の際にはHACCPの概念に基づく衛生管理(「大規模食中毒対策等について」(平成9年 3月 24日付衛食第 85号生活衛生局長通知)参照)の導入に努めること。
・利用者負担: 食事の提供に要する費用、創作的活動にかかる材料費、日用生活品費について、利用者から徴収できることとする。ただし、上記費用にかかるサービスの提供に当たっては、あらかじめ、利用者に対し、当該サービスの内容及び費用について説明を行い、利用者の同意を得なければならない。
・生産活動: 生産活動の機会の提供に当たっては、生産活動に従事する者の利用時間、 作業量等がその者に過重な負担とならないように配慮しなければならない。生産活動を行っている利用者に、【生産活動にかかる事業の収入】から【生産活動にかかる事業に必要な経費】を控除した額に相当する金額を、工賃として支払わなければならない。
・虐待防止: 虐待の防止や、虐待を受けているおそれがある場合の措置等、事業者の責務の明確化が必要である。
・重度障害者への配慮: 重度の障害という理由でサービス提供を拒否することを禁止する 。
・消防計画の策定: 防火管理者を選定し、消防計画を策定すること。また、定期的に消防訓練を実施し、万が一の災害時に備えること。
まとめ
就労継続支援B型サービスは、障害をもつ方々が社会参加し、自立を目指すためのたいせつな制度です。
事業者は、指定基準を守りつつ、利用者が安心して働ける環境を整えることが求められています。
この基準をしっかりと理解し、適切な運営を心がけることが、支援の質を高めるために不可欠です。
参照文献等
ウェルネットなごや「事業所の新規指定申請の手続きについて」
https://www.kaigo-wel.city.nagoya.jp/_files/00179010/shitei-tebiki20240401.pdf
(最終閲覧2024年10月23日)
WAM NET「障害福祉サービス等指定基準・報酬関係Q&A」https://www.wam.go.jp/wamappl/shougaiServiceQA.nsf/aList?Open&sc=33&ty=&td=&pc=1
(最終閲覧2024年10月23日)
伊藤誠『障がい福祉事業の開業・手続き・運営のしかた〔改訂3版〕』(2024年8月、アニモ出版)