共同生活援助の事業者指定基準
はじめに
共同生活援助(グループホーム)は、障害を持つ方々が地域で自立した生活を送るために、生活支援を提供する重要な福祉サービスです。
このサービスは、障害者が家庭や施設の外で、より自由で自律した生活を送ることを目的としています。
日常生活のサポートに加えて、社会との関わり方を学び、地域社会の中での生活に必要なスキルを身につけるための支援も行われます。
障害者総合支援法に基づき、共同生活援助を提供する事業者には、一定の基準を満たすことが求められます。
本記事では、共同生活援助サービスを提供する事業者が遵守すべき指定基準について、わかりやすく解説していきます。
1. 共同生活援助サービスとは?
1-1. 内容
共同生活援助サービスは、利用者が日常生活を円滑に送れるようにサポートを提供する福祉サービスです。
具体的には、利用者が自分の力で生活できるように、食事の準備や洗濯、掃除などの生活支援を行います。
また、利用者の生活の自立を促すために、生活技術の指導や社会的なサポートを行います。
このサービスの中では、利用者が地域社会の一員として自立した生活を送るためのアドバイスや、コミュニケーションスキルの向上を目指す指導も行われます。
これにより、利用者は社会に対する不安を軽減し、自己肯定感を高めることができます。
1-2. 対象者
共同生活援助サービスの対象者は、主に障害を持つ方々で、地域社会の中で共同生活を希望する方です。
このサービスは、知的障害や精神障害を持つ方々に特に有効で、彼らが一人では難しい日常生活を共同で補い合いながら、より充実した生活を送ることを目指しています。
原則として、18歳以上の障害者手帳を所持している方がこのサービスの対象となりますが、特定の状況によっては、それ以外の方も対象となる場合があります。
例えば、障害者手帳が無くても支援を必要とする人に対しても柔軟に対応するケースがあります。
2. 共同生活援助サービスの人員に関する基準
共同生活援助サービスを適切に提供するためには、適切な人数とスキルを持った人員が配置されることが不可欠です。
以下に、共同生活援助を運営するために必要な人員とその配置基準について詳しく説明します。
2-1. 世話人
職務内容
世話人は、利用者の日常生活を支援する重要な役割を担っています。
具体的には、食事の準備や買い物、掃除など、日常生活における基本的なサポートを提供します。
また、利用者が安心して生活できるように、精神的なケアや生活上のアドバイスを行うことも世話人の仕事です。
利用者の状態をよく観察し、困っていることや不安を取り除く役割も果たします。
配置基準
世話人の数は、以下の方法により算定して得た数以上となります。
介護サービス包括型
外部サービス利用型 |
常勤換算方法により、利用者数を6で除した数
(6:1以上) |
日中サービス支援型 | 常勤換算方法により、利用者数を5で除した数
(5:1以上) |
2-2. 生活支援員
職務内容
生活支援員は、利用者が自立して生活できるように日常的なサポートを提供します。
家事や掃除、買い物といった日常生活のサポートを行いながら、利用者ができるだけ自分の力で生活できるようにサポートします。
生活支援員は、利用者が将来的により自立した生活を送れるように、生活技術の向上を目指す指導も行います。
配置基準
生活支援員の数は、常勤換算方法で、以下の方法により算定して得た合計数以上となります。
障害支援区分3の利用者数を 9で除した数 | 9:1 |
障害支援区分4の利用者数を 6で除した数 | 6:1 |
障害支援区分5の利用者数を 4で除した数 | 4:1 |
障害支援区分6の利用者数を 2.5で除した数 | 2.5:1 |
2-3. 夜間従事者
職務内容
夜間従事者は、利用者が夜間の時間を安心して過ごせるように見守りを行います。
夜間に急な体調不良や不安が生じた場合、迅速に対応することが求められます。
夜間従事者は、利用者が安心して休息できるよう、緊急時には適切な対応を行い、必要に応じて医療機関や家族への連絡を行います。
配置基準
夜間従事者は、日中サービス支援型のみで1名以上を配置することになります。
夜間従事者は、もっぱら指定に係る事業所の職務に従事する者でなければなりません(ただし、利用者の支援に支障がない場合はこの限りではありません)。
生活支援員・世話人のうち1名は、常勤でなければなりません。
2-4. サービス管理責任者
職務内容
サービス管理責任者は、共同生活援助のサービス全体を管理し、運営の質を維持する責任を負います。
具体的には、支援計画の作成や、利用者に提供されるサービスが適切かどうかの確認を行います。
スタッフと連携しながら、利用者一人ひとりのニーズに応じた支援が行われているかを定期的に評価し、必要に応じて改善を行います。
配置基準
サービス管理責任者の数は、事業所ごとに、以下の方法により算定して得た数以上となります。
サービス管理責任者は、専ら指定に係る事業所の職務に従事する者でなければなりません(ただし、利用者の支援に支障がない場合はこの限りではありません)。
利用者の数が30人以下 | 1以上 |
利用者の数が31人以上 | 利用者の数が30を超えて、30又はその端数を増すごとに1を加えて得た数
(例)利用者数31人→サビ管2名 |
2-5. 管理者
職務内容
管理者は、事業所全体の運営とスタッフの管理を行います。
事業所の運営に関わる業務全般を担当し、適切なサービスが提供されるように全体を監督します。
管理者は、行政機関とのやり取りや、事業所が法令を遵守しているかを確認し、適切な運営体制を整える重要な役割を担います。
配置基準
管理者は、事業所ごとに配置することになります。
管理者は、専ら指定に係る事業所の管理業務に従事する常勤の者でなければなりません。
ただし、指定グループホーム事業所の管理上支障がない場合は、当該指定事業所の他の職務に従事し、又は事業所、施設等の職務に従事することができます。
指定グループホーム事業所の管理者は、適切な指定サービスを提供するために必要な知識と経験を有する者でなければなりません。
3. 共同生活援助サービスの設備に関する基準
3-1. 事業所
指定グループホームに係る共同生活住居は、住宅地又は住宅地と同程度に利用者の家族や地域住民との交流の機会が確保される地域にあり、かつ、入所施設及び病院の敷地外にあるようにしなければなりません。
指定事業所は、1以上の共同生活住居(サテライト型住居を除く)を有するものとし、当該共同生活住居及びサテライト型住居の入居定員の合計は4人以上とします。
3-2. 住居
共同生活住居の配置、構造及び設備は、利用者の特性に応じて工夫されたものでなければなりません。
共同生活住居は、その入居定員を2名以上10名以下とします。
ただし、既存の建物を共同生活住居とする場合にあっては、当該共同生活住居の入居定員を2名以上20名以下とすることになります。
そのほか、建物は、事業所所有または賃貸のいずれもできます。一戸建ては、200㎡未満であれば、用途変更は必要ありません。食堂と居間を1つの場所とすることはできます。
トイレの手洗いと洗面所の兼用はできません。
3-3. ユニット
居室及び居室に隣接して設けられる相互に交流することができる設備により一体的に構成される場所のことを、「ユニット」といいます。
共同生活住居は、1以上のユニットを有するほか、日常生活を営む上で必要な設備を備えなければなりません。
ユニットの入居定員は2名以上10名以下となります。
3-4. 居室
居室の定員は、1人です。
ただし、利用者のサービス提供上必要と認められる場合は、2人とすることができます。
居室の面積は、収納設備等を除き、7.43㎡以上としなければなりません。
1部屋を単にカーテンやパーテイションで分けたものはできません。
4. 共同生活援助の運営に関する基準
4-1. 利用者負担額等の受領
指定事業者は、指定サービスについて提供される便宜に要する費用のうち、①食材料費、②家賃、③光熱水費、④日用品費、⑤その他の費用の支払いを、利用者から受けることができます。
指定事業者は、費用の額の支払を受けた場合、当該費用に係る領収証を当該費用の額を支払った利用者に対し交付しなければなりません。
また、上記の費用に係るサービスの提供に当たり、あらかじめ、利用者に対し、当該サービスの内容及び費用について説明を行い、利用者の同意を得なければなりません。
4-2. 地域との連携
共同生活援助の運営には、地域社会との連携が重要です。
自治体や地域住民との協力関係を築き、利用者が地域で安心して暮らせる環境を整えることが必要です。
まとめ
共同生活援助サービスを提供するには、細かな基準を守ることが求められます。
人員や設備、運営に関する基準を遵守することで、利用者が安心して生活できる環境を提供できるようになります。
事業者としては、これらの基準をしっかり理解し、利用者に最適な支援を提供し続けることが大切です。
また、地域社会との連携を深めることで、利用者がより豊かな生活を送ることが可能になります。
参照文献等
ウェルネットなごや「事業所の新規指定申請の手続きについて」
https://www.kaigo-wel.city.nagoya.jp/_files/00179010/shitei-tebiki20240401.pdf
(最終閲覧2024年10月21日)
WAM NET「障害福祉サービス等指定基準・報酬関係Q&A」
https://www.wam.go.jp/wamappl/shougaiServiceQA.nsf/aList?Open&sc=33&ty=&td=&pc=1
(最終閲覧2024年10月21日)
伊藤誠『障がい福祉事業の開業・手続き・運営のしかた〔改訂3版〕』(2024年8月、アニモ出版)