就労継続支援B型の内容
1. はじめに
就労継続支援B型は、障害者の方が一般企業での就労が困難な場合に、社会との接点を持ちながら働くことができる福祉サービスの一つです。
このサービスは、障害者の自立生活を支援することを目的としており、特に長期的に働くことを目指す方や、一定のリズムを持って社会生活を送りたい方々に向けられています。
自分のペースで作業に取り組むことができ、無理なく労働に参加できる点が特徴です。
本記事では、就労継続支援B型の詳細な内容や利用手続き、A型との違いなどについて、わかりやすく解説していきます。
2. 就労継続支援B型のサービス内容
2-1. 概要
就労継続支援とは、自立支援給付のうち訓練等給付の対象となる障害福祉サービスです。
就労継続支援の目的は、通常の事業所に雇用されることが困難な障害者につき、就労機会を提供するとともに、生産活動その他の機会の提供を通じて、その知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の便宜を供与することです。
就労継続支援には、雇用契約を締結するA型(雇用型)と、雇用契約を締結しないB型(非雇用型)があります。
2-2. 働く機会を提供する
利用者と事業所は、雇用契約は結びません。
利用者は、比較的簡単な作業を行い、作業分を工賃(賃金)として受け取ります。
利用者は、比較的自由に自分のペースで働くことができます。
2-3. どんな活動(作業)をするのか
利用者が行う活動は、事業所が用意します。
製造業や内職系の仕事を受注することが多いです。
事業所は、利用者の特性と経営リスクを考慮して、複数の活動を確保する必要があります。
-B型で行う活動の例
・内職などの軽作業
・パンの製造と販売
・簡単な調理補助と配膳
・リサイクルに伴う作業
・移動販売
・クリーニングや清掃
2-4. 一般的な企業への就職に向けた支援をする
一般企業での就労や、就労移行支援・就労継続支援A型への移行を希望する利用者に対しては、事業者は、就労するのに必要な挨拶などの就労習慣や、さまざまな業種をこなすための技能を習得するのに向けた支援を行います。
2-5. 利用者の工賃(賃金)について
就労継続支援B型では、賃金ではなく「工賃」が支払われます。
工賃は作業に応じた対価として支払われるもので、金額は事業所によって異なります。
原則として就労継続支援B型の事業収入から充当され、法律で月額3,000円以上と定められています。
工賃の支給額は、事業所の収益や利用者の作業量に影響されるため、変動することがあります。
3. 対象者
就労継続支援B型のサービスを利用できるのは、一般企業での雇用が困難な障害者の方々です。精神障害、知的障害、発達障害、身体障害など、さまざまな障害を抱える方が対象となります。
具体的には、次のような方になります。
・一般企業などでの就労経験がある人
・雇用型の就労継続支援での就労経験がある人のうち、年齢的・体力的な面で雇用されることが難しくなった人
・就労移行支援を利用したが、企業での就労や雇用型の就労継続支援に至らなかった人
・50歳に達している人、または、障害基礎年金の1級受給者
・試行の結果、企業等の雇用、就労移行支援、就労継続支援A型の利用が難しいと判断された人
また、年齢や性別にかかわらず、誰でも利用できる点も特徴です。
特に、就労の経験が少ない方や、一般企業での長時間勤務が体力的に難しい方にとって、適した支援プログラムです。
4. スタッフ
就労継続支援B型では、専門のスタッフが常駐し、利用者を支援します。
スタッフは、利用者が安心して作業に取り組めるよう、さまざまな形でサポートを提供します。
-生活支援員
生活支援員は、利用者が日常生活や作業をスムーズに進められるようにサポートします。
体調管理のアドバイスや、個々の特性に合わせた支援を行い、必要に応じて生活面での助言も行います。
-職業指導員
職業指導員は、作業の内容や手順を指導し、必要なスキルを身に付けるためのサポートを行います。
利用者の得意分野や興味に応じた作業を提案し、作業を通じてスキルアップを目指します。
5. 就労継続支援A型とのちがい
就労継続支援には、A型とB型という2つの形態が存在します。
それぞれ、支援内容や雇用形態に違いがあり、利用者の状況に応じて選択されます。
-雇用契約
A型では、利用者と事業所の間で雇用契約が結ばれます。
これにより、利用者は労働者としての権利を有し、労働基準法の適用を受けます。
一方、B型では雇用契約が結ばれないため、契約に基づく義務や権利が発生することはありません。
-労働基準法の適用
A型では労働基準法が適用されるため、勤務時間や休憩時間、残業時間などが法的に保護されます。
また、働く時間に応じて給与が支払われるため、B型と比べて安定した収入が期待できます。
-最低賃金法の適用
A型では最低賃金法が適用されるため、利用者には最低賃金以上の給与が支払われます。
一方、B型では工賃が支払われるため、最低賃金法の適用はありません。
そのため、工賃の金額はA型に比べて低くなる傾向があります。
-その他
A型では一般就労に向けての訓練やスキルアップが重視されますが、B型では就労そのものが目的であり、利用者が自分のペースで長期的に働ける環境が提供されます。
そのため、B型はより柔軟な働き方を求める方に適しています。
6. 就労継続支援B型のサービスを利用するには
6-1. 手続き
就労継続支援B型を利用するためには、まず市町村の障害福祉窓口にて申請を行う必要があります。
障害福祉サービスの受給者証を交付されるためには、医師の診断書や申請書の提出が必要です。
申請後、審査が行われ、適格と判断されれば、サービスの利用が開始されます。
利用者はその後、事業所との面談を経て、具体的な作業内容や支援計画が決定されます。
6-2. 利用者負担
就労継続支援B型を利用する際、利用者には所得に応じた自己負担があります。
この負担額は、利用者の収入や家族の状況によって異なり、所得が低い場合には負担額が軽減される仕組みがあります。
また、自治体によっては、利用者負担が無料となる場合もあり、負担を大幅に軽減できる制度が整えられています。
7. まとめ
就労継続支援B型は、障害者の方が自立した生活を送るために必要な就労機会を提供する重要な福祉サービスです。
雇用契約がないため、柔軟に働ける点が魅力ですが、その一方で工賃が賃金より低いことが課題です。
しかし、働くこと自体に大きな意味があり、生活リズムを整え、社会とのつながりを持ち続けることができるという大きな利点があります。
利用に際しては、適切な手続きを踏んで、自己負担額なども含めて事前に確認することが大切です。
参照文献等
WAM NET、トップ > 制度解説コーナー > 障害者福祉>「利用までの流れ」
https://www.wam.go.jp/wamappl/seidokaisetsu.nsf/vdoc/syogai_02?Open
(最終閲覧2024年10月7日)
WAM NET、トップ > 制度解説コーナー > 障害者福祉 > サービス一覧/サービス紹介 > 就労継続支援B型(非雇用型)
https://www.wam.go.jp/wamappl/seidokaisetsu.nsf/vdoc/syogai_03_16?Open
(最終閲覧2024年10月8日)
伊藤誠『障がい福祉事業の開業・手続き・運営のしかた〔改訂3版〕』(2024年8月、アニモ出版)