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【障害福祉サービス】福祉・介護職員の処遇を改善した場合の加算

障害福祉サービスにおける福祉・介護専門職員等処遇改善加算について

 

福祉・介護専門職員等処遇改善加算(以下、処遇改善加算)は、障害福祉サービス事業所が職員の賃金改善を図るために設けられた制度です。
この制度を適切に活用することで、職員のモチベーション向上や離職率の低下、さらには提供するサービスの質向上が期待できます。
本記事では、処遇改善加算の概要、種類と要件、取得手続き、注意点などを詳しく解説します。
加算を初めて検討している方や、既に活用しているけれど疑問点がある方の参考になれば幸いです。

1. 処遇改善加算とは?

処遇改善加算は、福祉・介護職員の給与を引き上げ、待遇を改善するために、障害福祉サービス事業所に支給される追加の報酬です。
この制度の目的は、職員のモチベーションを向上させ、事業所内の人材定着を促進すると同時に、サービスの質の向上を実現することにあります。

職員の離職率が高い福祉・介護業界では、職員の待遇改善は深刻な課題です。
処遇改善加算を活用することで、給与面での不満を解消し、安心して働ける職場環境を整えることが可能です。
また、この加算は単なる賃金の引き上げにとどまらず、事業所全体の成長を支える重要な制度とも言えます。

 

2. 加算の種類と要件

処遇改善加算には、以下のような区分が存在し、それぞれに異なる要件と加算率が設定されています。

出典:伊藤誠『障がい福祉事業の開業・手続き・運営のしかた〔改訂3版〕』(2024年8月、アニモ出版)234頁

 

2-1. 加算Ⅰ

①特徴:最も高い加算率が適用される。8.1%~41.7%

②要件
– 月額賃金を改善すること(Ⅰ・Ⅱ)。
– 任用要件・賃金体系を整備することなど(キャリアパス要件Ⅰ)。
– 研修を実施することなど(キャリアパス要件Ⅱ)。
– 昇給の仕組みを整備することなど(キャリアパス要件Ⅲ)。
– 改善後の賃金の要件が440万円以上になること(キャリアパス要件Ⅳ)。
– 介護福祉士等を配置すること(キャリアパス要件Ⅴ)。

 

2-2. 加算Ⅱ

①特徴:加算Ⅰよりも加算率が低いが、一定の要件を満たすことで適用される。8.0%~40.2%

②要件
– 月額賃金を改善すること(Ⅰ・Ⅱ)。
– 任用要件・賃金体系を整備することなど(キャリアパス要件Ⅰ)。
– 研修を実施することなど(キャリアパス要件Ⅱ)。
– 昇給の仕組みを整備することなど(キャリアパス要件Ⅲ)。
– 改善後の賃金の要件が440万円以上になること(キャリアパス要件Ⅳ)。

 

2-3. 加算Ⅲ

①特徴:基本的な要件を満たすことで適用可能。6.7%~34.7%

②要件
– 月額賃金を改善すること(Ⅰ・Ⅱ)
– 任用要件・賃金体系を整備することなど(キャリアパス要件Ⅰ)。
– 研修を実施することなど(キャリアパス要件Ⅱ)。
– 昇給の仕組みを整備することなど(キャリアパス要件Ⅲ)。

 

2-4. 加算Ⅳ

①特徴:基本的な要件を満たすことで適用可能。5.5%~27.3%

②要件
– 月額賃金を改善すること(Ⅰ・Ⅱ)
– 任用要件・賃金体系を整備することなど(キャリアパス要件Ⅰ)。
– 研修を実施することなど(キャリアパス要件Ⅱ)。

 

これらの加算区分の具体的な加算率や要件は、自治体や年度ごとに異なる場合があります。
最新情報を確認することが重要です。

 

3. 加算取得の手続き

処遇改善加算を取得するには、以下の手続きが必要です。

 

3.1 賃金改善計画の策定

まず、事業所は「どのように職員の賃金を改善するか」という計画を作成する必要があります。
この計画には、賃金改善の内容、対象となる職員、改善の時期などを具体的に記載します。
また、計画が現実的であり、事業所の経営状況に適していることも重要です。

 

3.2 計画の提出

策定した賃金改善計画を管轄の行政機関(市町村や都道府県)へ提出します。
この提出には、決められた書式や添付書類が必要で、締め切りが設定されています。
特に、年度末や新年度の開始前は提出期限が集中するため、計画的に準備を進める必要があります。

 

3.3 実績報告

加算を受け取った後、事業所は賃金改善が実際に行われたかどうかを行政機関に報告する必要があります。
この報告書では、職員の給与明細や改善内容が反映された帳簿などを提出する場合があります。

 

これらの手続きは毎年更新や再提出が求められることがあるため、継続的な対応が必要です。

 

4. 処遇改善加算を活用するメリット

処遇改善加算を活用することで、事業所には以下のようなメリットがあります。

– 職員のモチベーション向上:給与の改善により、職員の満足度が向上し、働きがいが生まれる。

– 人材定着率の向上:待遇改善により、離職率が低下し、経験豊富な職員を確保できる。

– サービスの質の向上:モチベーションの高い職員が増えることで、利用者へのサービスの質も向上する。

– 事業所の信頼性向上:加算を取得している事業所は、職員に対しても利用者に対しても信頼性が高まる。

 

5. 注意点

処遇改善加算を活用する際には、いくつかの注意点があります。

5.1 計画内容の正確性

賃金改善計画の内容が不適切であったり、計画通りに実施されなかったりする場合、加算が認められない可能性があります。
計画策定時には、事業所の現状を十分に把握し、現実的な内容にすることが重要です。

5.2 提出期限の遵守

提出期限を過ぎると、加算を受けることができなくなる場合があります。
期限内に必要書類を準備するため、早めの対応が求められます。

5.3 最新情報の把握

処遇改善加算は、年度ごとに要件や手続きが変更されることがあります。
そのため、自治体や行政機関からの通知をこまめに確認し、変更点に対応することが重要です。

 

まとめ

遇改善加算は、職員の待遇を向上させることで、人材の定着やサービスの質向上を実現するための重要な制度です。
適切な手続きを行い、加算を最大限に活用することで、事業所全体の活性化が期待できます。
また、加算を受ける際には、計画内容の適切性や手続きの正確性を確認し、期限を守ることが重要です。

明点や手続きでお困りの場合は、障害福祉サービス事業者をサポートする行政書士にご相談ください。
専門家のアドバイスを受けることで、手続きの負担を軽減し、スムーズな加算取得が可能となります。

ならざき行政書士事務所は、障害福祉サービスの事業者様をサポートしています。
取扱い業務および料金は、こちらのページをご覧ください。
ご相談・ご依頼は、こちらのお問い合わせフォームよりお寄せください。

 

参照記事等

大阪府のウェブサイト「令和6年度福祉・介護職員等処遇改善加算」
https://www.pref.osaka.lg.jp/o090080/jigyoshido/jiritu_top/r6-syogu.html
(最終閲覧2024年11月26日)

兵庫県のウェブサイト「福祉・介護職員の処遇改善について(加算)」
https://web.pref.hyogo.lg.jp/kf08/documents/h24syoguukaizennkasann.html

(最終閲覧2024年11月26日)

埼玉県のウェブサイト「【障害福祉】福祉・介護職員処遇改善加算等について」
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0605/siteitetuduki/syougai-syoguukaizen.html
(最終閲覧2024年11月26日)

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