特定技能第1号の在留資格
日本では、少子高齢化の影響による深刻な人手不足を補うため、外国人労働者の受け入れが進められています。
その中で、「特定技能」という在留資格は、即戦力となる外国人が特定の産業分野で働ける制度として設けられました。
この資格には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類がありますが、今回はより多くの方に関係のある「特定技能1号」について詳しく解説します。
1. 特定技能1号とは
「特定技能1号」は、一定の専門知識や技能を持ち、人手不足が深刻な特定の産業分野で即戦力として働ける外国人に与えられる在留資格です。
この資格を取得することで、日本国内の特定の業務に就くことができます。
特定技能1号は、特に経験や高度な資格がなくても、必要な技能試験や日本語能力試験に合格することで取得可能なため、多くの外国人にとって現実的な選択肢となっています。
この制度は、専門性の高い職種だけでなく、比較的短期間の訓練で習得可能な業務を含むため、多様なバックグラウンドを持つ人々がチャレンジできる内容となっています。
2. 対象となる14の産業分野
特定技能1号の対象となる産業分野は、現在以下の14分野に限定されています。
1.介護:高齢化社会を支える介護現場での人材不足を補う。
2.ビルクリーニング:オフィスビルや公共施設の清掃業務を担う。
3.工業製品製造業:機械部品の製造や組み立て。
4.建設業:建物の施工や土木作業。
5.造船・舶用工業:船舶の製造や修理。
6.自動車整備業:自動車の点検や修理。
7.航空業:空港内での業務や整備。
8.宿泊業:ホテルや旅館での接客やサービス提供。
9.自動車運送業
10.鉄道
11.農業:野菜や果物の栽培。
12.漁業:水産資源の確保や養殖。
13.飲食料品製造業:食品の加工や製造。
14.外食業:レストランや飲食店での接客や調理。
15.林業
16.木材産業
これらの分野では慢性的な人手不足が続いており、特定技能1号による労働力の確保が期待されています。
産業分野ごとの特徴
例えば、介護分野では、高齢者の生活を支えるための基本的な介護技術を習得していれば活躍できます。
また、外食業では調理や接客のスキルが求められる一方で、明るく親しみやすい態度も重要です。
各分野における具体的な業務内容や必要な技能については、関連団体が提供する試験情報や資料を確認することが推奨されます。
3. 特定技能1号取得の条件
技能試験と日本語能力試験
特定技能1号を取得するためには、次の条件を満たす必要があります。
-技能水準試験の合格:希望する分野における基本的な業務能力を確認する試験です。試験内容は分野ごとに異なります。
-日本語能力試験の合格:日本語での日常会話や業務上の基本的なコミュニケーションができる能力を証明する試験が必要です。「国際交流基金日本語基礎テスト」でA2以上、または「日本語能力試験」でN4以上の成績を収める必要があります。
試験の内容は分野ごとに異なり、オンラインでの受験や海外での試験実施も進められています。
例えば、農業分野では栽培方法や収穫作業に関する知識が問われる一方で、宿泊業では接客マナーやサービスに関する技能が評価されます。
4. 在留期間と更新のルール
特定技能1号の在留期間は、1回につき1年を超えない範囲で認められ、最大で5年間まで更新可能です。
この期間中に新たな試験や資格が必要になることはありません。
ただし、5年を超える滞在を希望する場合は、特定技能2号への移行が必要となります。
在留期間の更新には、引き続き同じ企業や分野での就労が条件となります。
また、契約内容の変更があった場合や企業が倒産した場合などは、新たな受け入れ先を見つける必要があります。
5. 家族の帯同について
特定技能1号では、原則として家族を日本に呼び寄せることはできません。
これは、資格自体が「単身者向け」として設計されているためです。
ただし、特定技能2号に移行することで、一部の条件下で家族帯同が認められる場合があります。
現時点で特定技能2号が認められている分野は建設業と造船・舶用工業に限られています。
そのため、家族帯同を希望する場合は、事前に計画を立てることが重要です。
6. 申請手続きの流れ
特定技能1号の取得手続きは以下のステップを含みます。
1.技能試験と日本語試験の合格:まず、希望分野の試験に合格する必要があります。
2.雇用契約の締結:受け入れ企業と正式な雇用契約を結びます。
3.在留資格認定証明書の申請:企業が出入国在留管理庁に申請を行います。
4.査証の申請:在留資格認定証明書を取得後、国外で査証を申請します。
5.入国と業務開始:査証取得後、日本に入国し、就労を開始します。
申請には多くの書類が必要となるため、事前の準備が欠かせません。
受け入れ企業が手続きを代行する場合も多いですが、外国人本人が自身の権利や義務を十分に理解することが重要です。
7. サポート体制と注意点
日本政府や各地方自治体では、特定技能で働く外国人を支援するための体制を整えています。
例えば、相談窓口や多言語対応の情報提供サービスなどが利用可能です。
また、受け入れ企業にも、外国人労働者がスムーズに業務を開始できるようサポートを提供する義務があります。
ただし、不適切な契約条件や違法な労働環境に巻き込まれるケースも報告されています。
資格取得後も、適切な情報を入手し、自身の権利を守る意識を持つことが大切です。
おわりに
特定技能1号は、日本で働きたいと考える外国人にとって、大きなチャンスを提供する制度です。
しかし、資格取得には試験合格や煩雑な手続きが必要であり、準備を怠ると不利な状況に陥ることもあります。
最新の情報を収集し、必要な準備を進めることで、夢の実現に向けて確実な一歩を踏み出しましょう。
参照記事等
出入国在留管理庁のウェブサイト「在留資格「特定技能」」
https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/specifiedskilledworker.html(最終閲覧2024年11月21日)
外務省のウェブサイト「新たな外国人材の受入れ 在留資格 特定技能」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/fna/ssw/jp/(最終閲覧2024年11月21日)
公益財団法人国際人材協力機構JITCOのウェブサイト「在留資格「特定技能」とは」https://www.jitco.or.jp/ja/skill/(最終閲覧2024年11月21日)