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【障害福祉サービス】障害福祉サービス事業のサービス報酬

障害福祉サービス事業のサービス報酬

 

はじめに

障害福祉サービス事業を円滑に運営するためには、「サービス報酬」の仕組みを理解することが非常に重要です。
サービス報酬は、サービス事業所が提供する支援の内容や地域、利用者の状況など、さまざまな要因に応じて支払われる報酬で、事業所の経営における基盤となるものです。
適切に算定された報酬は、事業所の運営を支えるだけでなく、利用者へのサービス向上にも直結します。

しかし、報酬の計算方法や資金の流れは非常に複雑で、多くの事業者が苦労している部分でもあります。
このため、今回の記事では、障害福祉サービス事業における「おかね」の流れや、サービス報酬の算定方法について、分かりやすく丁寧に解説します。
事業所の運営に役立つ情報をしっかりと学び、報酬算定の理解を深めましょう。

 

1. 障害福祉サービス事業の「おかね」の流れ

障害福祉サービス事業では、サービス事業所、利用者、市町村、国民健康保険団体連合会(国保連)という4つの主体が関わり、それぞれの役割に応じて資金のやり取りが行われています。
これらの主体の役割を理解し、資金がどのように流れるかを把握することが重要です。

①サービス事業所
障害者やその家族に対して様々な福祉サービスを提供し、その対価として報酬を受け取ります。
サービス事業所の収入の大部分がこの報酬から成り立っており、事業所運営において生命線となります。

②利用者
サービスを利用する障害者やその家族は、利用に応じた自己負担額を支払います。
ただし、自己負担額には上限が設けられており、利用者の経済的な負担が過度に増えないよう配慮されています。
自己負担以外の費用は市町村や国の公費で賄われ、利用者が安心してサービスを利用できる仕組みが整えられています。

③市町村
利用者の申請に基づいて給付額を決定し、サービス事業所に対して報酬を支払います。
市町村は給付の窓口として重要な役割を担い、国保連を通して支払いを行います。
市町村の財政状況も給付額に影響を与えるため、地域差が発生する場合もあります。

④国保連
国民健康保険団体連合会(国保連)は、市町村の代理として報酬の支払いを行います。
国保連が市町村からの委託を受けてサービス報酬の調整を行うことで、資金の流れがスムーズに進むように管理されています。
国保連の役割があることで、事業所への迅速な資金供給が実現されています。

給付額を求める計算式

サービス事業所が受け取る給付額は、提供するサービスの種類や地域、そしてサービスの質などに応じて変動します。
具体的には、地域区分やサービスの単位数などを元に計算されるため、事業所ごとの条件に応じた細かな調整が必要です。
報酬の算出には計算式が用いられ、正確な算出が求められます。

 

 

2. サービス報酬(給付金)額の算定方法

サービス報酬を正確に算定するためには、以下の3つのステップが必要です。
地域やサービス内容に応じて報酬額が異なるため、それぞれの手順をしっかりと理解しておくことが重要です。

 

2-1. 地域区分を調べる

まず、事業所が位置する地域区分を確認します。
地域によってサービス報酬の単価が異なるため、都市部と地方では報酬額に差が出ることが多いです。
地域の特性や生活コストに応じて報酬単価が設定されているため、まずはこの区分を調べておくことが第一歩です。

出典:伊藤誠『障がい福祉事業の開業・手続き・運営のしかた〔改訂3版〕』(2024年、アニモ出版)21頁

2-2. サービスの単位数を調べる

次に、提供するサービスの単位数を確認します。
単位数は、サービスの内容や提供時間に基づいて設定されており、具体的な報酬額の算出にはこの数値が重要です。
例えば、日中活動支援のような長時間の支援を行う場合と、短時間の支援を行う場合では単位数が異なるため、事業所の提供サービスに応じて正確に確認することが必要です。

 

2-3. 当該地域における当該サービスの報酬単価を調べる

最後に、地域ごとの報酬単価を調べ、単位数と掛け合わせることで最終的な報酬額を求めます。
報酬単価は国や自治体の経済政策や福祉政策に基づいて年々見直される場合があるため、最新の情報を基に確認することが大切です。

出典:伊藤誠『障がい福祉事業の開業・手続き・運営のしかた〔改訂3版〕』(2024年、アニモ出版)22頁

【設例】次の事業所の本体報酬額は?

・就労継続支援A型
・利用者:20人
・世話人の配置「7.5:1」
・スコア「80点以上105点未満」
・1か月=22日間
・愛知県名古屋市(3級地)

【利用者1人の1日当たりの報酬額】
533単位×10.86円=5,788円(端数切捨て)

【利用者20人の1月(22日)当たりの報酬額】
5,788円×20人×22日=2,546,720円

3. 共同生活援助のサービス報酬の算定基準

共同生活援助(グループホーム)では、利用者数とスタッフ配置数に基づいて報酬額が決まります。
共同生活援助は、障害者が集団生活を通じて自立支援を受けられる場所として非常に重要な役割を持っており、報酬基準も詳細に規定されています。

 

3-1. 共同生活援助サービス費Ⅰ: 世話人の配置数が利用者6人に対して1名以上

共同生活援助(グループホーム)では、利用者6人に対して1名以上の世話人が配置されている場合、特定の報酬基準が適用されます。
世話人の配置数が多いほど、利用者に対する支援が行き届くため、より高い報酬が設定されます。
この配置基準を満たすことが、グループホーム運営の重要なポイントです。

共同生活援助サービス費Ⅰ:世話人の配置「6:1」
区分6 600単位/日
区分5 456単位/日
区分4 372単位/日
区分3 297単位/日
区分2 188単位/日
区分1以下 171単位/日

 

【設例】次の事業所の本体報酬額は?

・共同生活援助
・世話人の配置:5名
・利用者(20人)の内訳
区分6:1人
区分5:2人
区分4:3人
区分3:4人
区分2:5人
区分1以下:5人
・1か月=22日間
・愛知県名古屋市(3級地)

【利用者20人の1日当たりの報酬額】
600単位×1人
+456単位×2人
+372単位×3人
+297単位×4人
+188単位×5人
+171単位×5人
=5,611単位

【利用者20人の1月(22日)当たりの報酬額】
5,611単位×22日×11.20円
=1,382,550円(端数切捨て)

4. 就労継続支援B型のサービス報酬の算定基準

就労継続支援B型の事業所では、利用者が生産活動を通じて工賃を得るための支援が行われます。
就労継続支援B型のサービス報酬は、利用者の工賃額や活動への参加状況など、実績に基づいた評価体系が特徴です。

 

4-1. 平均工賃額に応じた報酬体系:職業指導員・生活支援員の配置数の利用者数に対する割合が「7.5:1」

就労継続支援B型では、利用者が得る平均工賃額に応じて報酬額が決まります。
利用者の工賃額が高いほど、事業所が行っている支援の質が評価され、報酬も高く設定されます。
このため、事業所にとって利用者の生産活動を充実させることが報酬額の向上につながるため、積極的な支援が行われています。

職業指導員・生活支援員の配置「7.5:1」、定員20人以下
平均工賃額45,000円以上 748単位
平均工賃額35,000円以上 716単位
平均工賃額30,000円以上 669単位
平均工賃額25,000円以上 649単位
平均工賃額20,000円以上 637単位
平均工賃額15,000円以上 614単位
平均工賃額10,000円以上 584単位
平均工賃額10,000円未満 537単位

 

職業指導員・生活支援員の配置「7.5:1」、定員21人以上
平均工賃額45,000円以上 666単位
平均工賃額35,000円以上 637単位
平均工賃額30,000円以上 596単位
平均工賃額25,000円以上 580単位
平均工賃額20,000円以上 557単位
平均工賃額15,000円以上 544単位
平均工賃額10,000円以上 520単位
平均工賃額10,000円未満 478単位

 

【設例】次の事業所の本体報酬額は?

・就労継続支援B型
・指導員・支援員の配置:3名
・利用者:20人
・平均工賃額:25,000円
・1月=22日間
・愛知県名古屋市(3級地)

【利用者1人の1日当たりの報酬額】
649単位×10.86円=7,048円(端数切捨て)

【利用者20人の1月(22日)当たりの報酬額】
7,048円×20人×22日=3,101,120円

 

4-2. 平均工賃額に応じた報酬体系:職業指導員・生活支援員の配置数の利用者数に対する割合が「6:1」

職業指導員・生活支援員の配置「6:1」、定員20人以下
平均工賃額45,000円以上 837単位
平均工賃額35,000円以上 805単位
平均工賃額30,000円以上 758単位
平均工賃額25,000円以上 738単位
平均工賃額20,000円以上 726単位
平均工賃額15,000円以上 703単位
平均工賃額10,000円以上 673単位
平均工賃額10,000円未満 590単位

 

職業指導員・生活支援員の配置「6:1」、定員21人以上
平均工賃額45,000円以上 746単位
平均工賃額35,000円以上 717単位
平均工賃額30,000円以上 676単位
平均工賃額25,000円以上 660単位
平均工賃額20,000円以上 637単位
平均工賃額15,000円以上 624単位
平均工賃額10,000円以上 600単位
平均工賃額10,000円未満 526単位

 

【設例】次の事業所の本体報酬額は?

・就労継続支援B型
・指導員・支援員の配置:5名
・利用者:20人
・平均工賃額:25,000円
・1か月=22日間
・愛知県名古屋市(3級地)

【利用者1人の1日当たりの報酬額】
738単位×10.86円=8,014円(端数切捨て)

【利用者20人の1月(22日)当たりの報酬額】
8,014円×20人×22日=3,526,160円

まとめ

障害福祉サービス事業の報酬制度は、利用者のニーズや地域の特性、サービス内容の違いに応じて設計されており、非常に細かい基準が設定されています。
報酬額の算定には、地域区分、サービス単位数、報酬単価の確認といった一連のステップが必要です。
これにより、サービス内容に応じた適切な報酬が得られ、事業所の安定運営が図られます。

また、事業所が提供するサービスの質や利用者への支援が報酬額に反映される仕組みがあるため、報酬の仕組みを理解し、適切に算定することで、利用者に対するサービスの向上も期待できます。
報酬制度の詳細を理解し、事業運営に活かしていくことで、障害福祉サービス事業が持続可能で充実したものになるでしょう。

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