相続対象の財産はどのようにして調べるのか
はじめに
相続が発生したとき、遺族が最初に直面する重要なステップは、遺産の全容を把握することです。
遺産の分割方法や相続税の支払い額を正確に算出するためには、相続対象となる財産がどのような種類のもので、どれくらいの価値があるのかを知る必要があります。
これは相続手続きをスムーズに進める上で不可欠な作業であり、間違った情報に基づいた遺産分割は後々トラブルを引き起こす原因になりかねません。
相続財産を確認するプロセスには、まず遺言書が存在するかどうかの確認が必要です。
遺言書があれば、その内容に従って相続手続きを進めることが可能ですが、遺言書がない場合には、民法の定める法定相続に従って財産が分配されます。
このため、財産の種類や価値を正確に調べ、記録することが必要となります。
本記事では、相続の対象となる財産の種類について詳しく説明し、それぞれの財産がどのように評価されるのか、具体的な調査方法や必要な書類についても解説します。
1. 相続対象の財産にはどんなものがあるのか
相続の際には、多岐にわたる財産が対象となり、それぞれの財産に応じた調査や評価方法が必要です。
財産は、大きく分けて不動産、金融資産、動産、そしてその他の財産に分類されます。
1-1. 不動産
不動産とは、土地や建物のことであり、相続財産の中でも大きなウェイトを占めることが多いです。
不動産は資産価値が高く、相続税の対象にもなりますので、適切な評価が求められます。
居住している家や所有している土地だけでなく、別荘や賃貸物件なども相続の対象となるため、すべての不動産を網羅的に確認することが重要です。
特に複数の不動産を所有している場合、それぞれの登記情報を確認し、相続手続きに漏れがないようにしましょう。
1-2. 金融資産
金融資産には、預貯金や有価証券(株式、投資信託など)が含まれます。
相続財産としての金融資産は、銀行口座の残高や株式の時価評価が重要となります。
また、金融資産は複数の金融機関に分散していることが多く、すべての口座や証券口座を把握するための確認が必要です。
預金口座が国内外にある場合や、家族に知られていない口座が存在することもあり得るため、銀行との連携が不可欠です。
さらに、金融資産は市場の動向によって価値が変動するため、評価時点での正確な価額を調べることが重要です。
1-3. 動産
動産とは、いわゆる物理的に存在する動かせる財産のことを指します。
自動車、貴金属、骨董品、家具、美術品、宝石などが含まれます。
特に、自動車や高価な美術品、ブランド品などは、相続税の対象となる場合がありますので、しっかりと価値を見極める必要があります。
動産は不動産や金融資産と異なり、所有者の感覚で価値が異なることが多いため、専門の鑑定士による評価が求められることもあります。
例えば、古美術品や宝石類は市場での評価が難しいため、専門的な知識を持った第三者の意見が不可欠です。
1-4. その他
その他の財産には、生命保険の受取金や貸付金、著作権、特許権といった無形資産も含まれます。
無形資産は形がないため、しばしば見落とされがちですが、その価値が大きい場合もあるため、きちんと確認しておく必要があります。
生命保険の受取金は、保険契約の内容によっては、非課税枠が適用される場合がありますが、契約内容や保険会社の手続きに従って確認することが重要です。
また、貸付金がある場合は、借用書や返済の証拠を確認し、債務者からの返済能力についても調査する必要があります。
2. 相続対象の財産及びその価額はどのようにして調べるのか
相続財産の調査は、相続手続きの中で非常に重要な役割を果たします。
財産を正確に把握し、その価値を評価するためには、財産ごとに必要な書類や手続きが異なります。
以下に、財産の種類ごとに必要な書類や調査方法を紹介します。
2-1. 不動産
不動産の価値を調べるには、まず土地や建物の所有者情報を確認するために、法務局から「登記事項証明書」を取得します。
この証明書は、その不動産が誰のものであるかを証明するもので、相続人が正式な所有者となるための手続きを進める際に必要です。
次に、その不動産の評価額を知るためには、市役所や区役所から「固定資産税評価証明書」を取り寄せます。
この証明書に記載された評価額は、不動産の相続税を計算するために使用されます。
不動産の評価は時価とは異なり、固定資産税の基準に基づいて算出されるため、専門的な知識が必要です。
2-2. 金融資産
金融資産の調査では、銀行や証券会社と連携することが重要です。
まず、故人が利用していたすべての金融機関に対して「残高証明書」を発行してもらいます。
この書類は、故人が亡くなった時点での預貯金の残高を証明するもので、相続税の申告にも使用されます。
株式や投資信託に関しては、証券会社から送られてくる「取引明細書」や「口座の残高報告書」を確認し、時価評価を行います。
金融資産は相続税の計算において非常に重要で、特に有価証券は株価の変動により評価額が変わるため、適切なタイミングでの評価が必要です。
2-3. 動産
動産の評価に関しては、専門の業者や鑑定士に依頼することが多いです。
例えば、自動車の価値を調べる場合には、「車両査定書」を取得し、現在の市場価値を基に評価します。
自動車は年式や走行距離、状態などによって価値が大きく変わるため、適切な査定が必要です。
美術品や骨董品、貴金属などは、専門的な知識を持つ鑑定士に依頼し、現在の市場価格を基に評価を行います。
これらの財産は、一見して価値がわからないことが多いため、プロの目による正確な査定が重要です。
2-4. その他
その他の財産に関しては、保険会社や借用書を基にした調査が必要です。
生命保険の受取金額については、保険会社から発行される「支払証明書」を確認し、相続税の対象となるかどうかを判断します。
保険金の受取金額や契約内容に応じて、税務処理が異なるため、専門家に相談することをお勧めします。
貸付金については、故人が貸し付けた金額やその返済状況を確認し、返済される見込みがあるかどうかも含めて調査します。
また、著作権や特許権などの無形資産に関しては、弁護士や専門家による評価が必要となることがあります。
これらの資産は市場での取引が少ないため、評価方法が複雑になる場合があります。
まとめ
相続財産を調査し、その価値を正確に評価することは、円滑な相続手続きを進めるための重要なステップです。
不動産や金融資産、動産、無形資産など、それぞれの財産には異なる調査方法や書類が必要ですので、事前に適切な準備を行いましょう。
また、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることで、相続手続きがスムーズに進むでしょう。
参考記事
辻・本郷税理士法人「相続財産調査とは?自分で漏れなく行う方法・専門家に依頼する基準も紹介」
https://www.ht-tax.or.jp/sozoku-guide/inheritance-investigation
(最終閲覧2024年10月20日)
ベリーベスト法律事務所「故人の財産調査を行う方法とは? 遺産の調べ方と5つの必要書類」
https://souzoku.vbest.jp/columns/356/(最終閲覧2024年10月20日)
税理士法人レガシィ「相続における財産調査とは?必要性や調査方法などの基本を解説」
https://legacy.ne.jp/knowledge/now/souzoku-tetsuduki/626-souzoku-zaisanchousa-hitsuyousei-kihon-kaisetsu/(最終閲覧2024年10月20日)