遺言書をめぐる誤った認識5選
1. はじめに
遺言書は、自分の財産や意思を将来にわたって確実に伝えるための重要な手段です。
遺言書を適切に作成することで、家族や相続人の間でのトラブルを防ぎ、遺産の分配やその意思を明確にすることができます。
しかし、遺言書についての知識が不足していると、間違った情報や誤解が原因で、遺言書の効果を十分に発揮できないケースも多々あります。
そこでこの記事では、遺言書に関して一般的に誤解されやすいポイントを5つ挙げ、その誤解を解消するために正しい理解を提供します。
特に、遺言書をまだ作成していない方や、これから作成を検討している方にとって、重要なポイントをわかりやすく解説します。
適切な知識を持つことで、後々のトラブルを未然に防ぎ、自分の希望通りに財産の分配やその意思を伝えることができるようになるでしょう。
2. 誤解1: 遺言書はすべて手書きでなければならない
誤った認識
「遺言書はすべて手書きで書かなければならない」という認識をもっている方が多いです。
特に、自筆でなければ無効になると思い込んでいる人も少なくありません。
手書きに自信がない人や、文章を書くことが苦手な人は、遺言書作成に対して抵抗を感じることがあります。
そのため、手書きに自信がないからといって、遺言書の作成を諦めてしまうことがあるのです。
正しい認識
実際には、遺言書には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」など、いくつかの形式があります。
自筆証書遺言は確かに本人が手書きで作成する必要がありますが、公正証書遺言の場合は、公証役場で作成され、本人が手書きをしなくても法的に有効です。
公正証書遺言では、遺言者が公証人の前で遺言の内容を口頭で説明し、公証人がその内容を文章にまとめてくれるため、手書きの必要がなく、形式の不備による無効リスクが低くなります。
特に、高齢者や手が不自由な方、文字を書くことに困難を感じる方には、安心して遺言書を作成できる選択肢となります。
3. 誤解2: 遺言書があれば必ず希望通りになる
誤った認識
「遺言書さえ書いておけば、自分の財産はすべて自分の希望通りに分配される」と考えている方も少なくありません。
遺言書を書けば、自分の意思が100%反映されると誤解しがちです。
財産をどのように分けるかは遺言者の自由だと思ってしまうことがあります。
正しい認識
遺言書があっても、必ずしも全ての内容がそのまま実現するわけではありません。
相続には法律上、法定相続人の遺留分という最低限の取り分が保障されています。
遺留分は、一定の相続人に必ず残さなければならない割合のことです。
これを無視して遺言書を作成しても、相続人が遺留分侵害を主張することができるため、結果的に希望通りにいかない場合があります。
そのため、遺言書を作成する際には、法律の規定を十分に理解し、遺留分を考慮した内容にすることが大切です。
また、法定相続人以外に財産を渡したい場合には、信託などの別の方法を検討することも有効です。
4. 誤解3: 財産が少なければ遺言書は必要ない
誤った認識
「自分には大した財産がないから、遺言書を書く必要はない」という考えを持っている方も多いです。
特に、現金や不動産の所有が少ない場合、遺言書の必要性を感じないことがあります。
また、「自分の財産は家族が勝手に分けてくれるだろう」と楽観的に考えることもあります。
正しい認識
財産の多寡にかかわらず、遺言書は家族や相続人のためにとても有用です。
特に、財産が少ない場合でも、その分け方に関しては細かいトラブルが発生する可能性があります。
例えば、わずかな財産でも、誰が何を受け取るかを明確にしておかなければ、残された家族同士で争いになる可能性があります。
また、家族間で「公平に分けよう」としても、その方法について意見が分かれたり、感情的な対立が生まれたりすることもあります。
そのため、財産が少ないからこそ、遺言書で明確な指示を残しておくことが大切です。
加えて、遺産以外にも、特定の希望や意思を伝えるために遺言書を活用することができます。
5. 誤解4: 遺言書は一度書いたら変更できない
誤った認識
遺言書は一度作成したら、もう変更や修正ができないと思っている方がいます。
このため、一度書いた内容が将来の事情に合わなくなっても、それを修正できないと考え、遺言書を作成することをためらう人もいます。
正しい認識
遺言書は生前であれば何度でも変更可能です。
例えば、財産状況が変わったり、家族構成に変化があったりした場合でも、遺言書を新たに作成することで、その時点での状況に合わせた内容に更新できます。
また、遺言書を新たに書き直すだけでなく、補足や追加の内容を「遺言補充書」として作成することも可能です。
変更や修正が必要になった際には、新しい遺言書を作成することで、古い遺言書を無効にできます。
このように、遺言書は常に最新の状況に合わせて見直しができるため、柔軟に対応することができます。
6. 誤解5: 遺言書は弁護士にしか頼めない
誤った認識
遺言書の作成は弁護士に依頼しなければならないという誤解も多く存在します。
特に、法的な知識が必要だと考え、遺言書の作成サポートには専門の弁護士しか対応できないと思っている方が多いです。
正しい認識
実際には、遺言書の作成サポートは行政書士にも依頼することができます。
行政書士は、遺言書の形式や内容についてのアドバイスを提供し、法律に基づいた適切な文書作成をサポートする専門家です。
特に、行政書士は遺産整理や財産分配の書類作成に精通しているため、遺言書の作成に関するサポートが得意です。
また、遺言書の内容が法的に問題ないかどうかの確認や、必要に応じて公正証書遺言の手続きもスムーズに進められます。
弁護士と比較しても、より身近で気軽に相談できる点が行政書士の強みです。
7. まとめ
遺言書に関する誤解は、結果的に家族や相続人にとって将来のトラブルを招く要因となりかねません。
遺言書を適切に作成し、自分の意思を正確に伝えるためには、正しい知識が不可欠です。
遺言書の形式や内容、変更の可否についてもよく理解した上で、自分や家族にとって最良の選択をすることが大切です。
行政書士や専門家の力を借りながら、早めに遺言書を作成し、後のトラブルを未然に防ぎましょう。
参考記事
行政書士法人 相続ワンストップ「【遺言書】7つの誤解 その1」
https://hachioji-s-o.com/yuigonnsho-1/(最終閲覧2024年10月3日)
行政書士法人 相続ワンストップ「【遺言書】7つの誤解 その2」
https://hachioji-s-o.com/yuigonnsho-2/(最終閲覧2024年10月3日)
司法書士法人さえき事務所「遺言を残さない人の6つの誤解」
https://www.souzoku-machida-sagamihara.com/igonsho/column_is02/(最終閲覧2024年10月3日)