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【障害福祉サービス】日本の障害福祉制度の歩み

日本の障害福祉制度の歩み

 

1. はじめに

日本における障害者福祉は、時代とともに進化し、多くの制度が設けられてきました。
本記事では、20世紀から現代までの日本の障害福祉制度の歴史とその変遷について、わかりやすく解説していきます。
障害者支援の制度はどのように発展し、どんな課題に直面してきたのか、各時代に起こった重要な出来事や制度改正について丁寧にまとめています。
現代の障害福祉制度がどのように成り立っているのかを知ることで、将来の日本社会の姿も見えてくるかもしれません。

2. 障害者福祉の歩み

 

2-1. 20世紀日本の障害者福祉

20世紀初頭の日本では、障害者福祉に関する公的支援はほとんど存在しませんでした。
障害者は家族に依存し、社会の中で孤立して生活していることが多かったのです。
しかし、第二次世界大戦後の高度経済成長期を経て、障害者に対する社会的な支援の重要性が認識されるようになり、福祉制度が少しずつ整備されていきました。
特に1970年代以降、政府は障害者に対する支援を制度化し、障害者の権利保護が社会の課題として本格的に取り組まれるようになりました。
この時期の福祉制度の発展は、現代の障害福祉制度の礎を築いたといえます。

 

2-2. 支援費制度の導入(2003年)

2003年には、画期的な制度として「支援費制度」が導入されました。
この制度は、障害者が自ら必要な福祉サービスを選び、利用できる仕組みを提供するもので、障害者の自己決定権を重視した制度設計が特徴です。

 

財源問題

支援費制度が導入されたものの、財源の問題は常に存在しました。
障害者に対する支援が拡充される一方で、国や自治体の財政負担が大きく、必要な支援を十分に提供できない状況が続きました。
このため、制度の持続可能性が問われるようになりました。

 

障害種別間の格差

支援費制度は画期的な取り組みでしたが、支援の内容において障害の種類による格差が存在しました。
身体障害者に対する支援は比較的充実していましたが、知的障害者や精神障害者に対する支援はまだ不十分だという声が多くありました。
この問題は、障害者の平等な支援を実現する上で大きな課題となっていました。

 

地域間格差

支援費制度は地域によって提供されるサービスの内容が異なり、地域格差が大きな問題となりました。
都市部では障害者に対する支援が充実している一方、地方では十分なサービスが提供されていない状況が続きました。
この地域間格差は、障害者がどこに住んでいるかによって受けられる支援が異なるという深刻な問題を浮き彫りにしました。

 

2-3. 障害者自立支援法の制定(2005年)

2005年には「障害者自立支援法」が制定され、障害者が地域社会で自立して生活できるよう支援することが法律で定められました。
この法律は、障害者に対する支援を制度化する大きな一歩となりましたが、制度上の問題が残されていました。

 

まだ残る財源問題

支援費制度に引き続き、障害者自立支援法においても財源の問題は解決されませんでした。
国や自治体の財政負担が重く、十分なサービス提供が困難な状況は変わらなかったのです。
財源問題は、障害者福祉制度の安定した運営を実現する上での大きな障壁となりました。

 

制度でカバーしきれない障害

障害者自立支援法は多くの障害者にとって重要な支援となりましたが、すべての障害者が十分にカバーされるわけではありませんでした。
特に、精神障害や発達障害を持つ人々に対する支援の不足が指摘されており、この分野の支援強化が求められるようになりました。

3. 障害者総合支援法とその改正

 

3-1. 障害者総合支援法(2012年)とは?

2012年に制定された「障害者総合支援法」は、これまでの制度を大幅に見直し、障害者に対する支援をさらに拡充するものです。
この法律の目的は、障害者が地域社会で自立し、より豊かな生活を送れるように包括的な支援を提供することにあります。

 

本法の目的

障害者総合支援法の最大の目的は、障害者が自分らしく地域で生活できる社会を実現することです。
この法律により、障害者が社会の中で孤立せず、必要な支援を受けながら自立して生活できるよう、支援の幅が広がりました。

 

本法による障害者支援の拡充

障害者総合支援法の制定によって、身体障害、知的障害、精神障害といったさまざまな障害に対応する支援サービスが充実しました。
これにより、これまで十分な支援を受けられなかった人々にも福祉サービスが行き届くようになりました。

 

本法施行後の見直し

障害者総合支援法は、施行後も数回の見直しが行われ、制度の改善が進められています。
この見直しの過程で、新たな支援ニーズに対応するための施策が追加され、より多くの障害者が安心して生活できるような環境が整えられています。

 

3-2. 改正障害者総合支援法の成立(2016年)

2016年に成立した改正障害者総合支援法は、障害者支援をさらに充実させるための重要な改正です。
これにより、障害者の生活を支えるための環境が一層強化されました。

 

概要1.障害者の望む地域生活の支援

改正法では、障害者が望む地域で生活し続けられるよう、地域生活を支援する仕組みが整備されました。
住み慣れた場所で障害者が自分らしく生活できるように、支援体制が強化されています。

 

概要2.障害児支援のニーズの多様化へのきめ細かな対応

障害を持つ子どもたちのニーズも多様化していることから、改正法では子ども一人ひとりに合った支援を提供することが強調されました。
教育や生活支援など、多様なニーズに対応するための制度が整備されました。

 

概要3.サービスの質の確保・向上に向けた環境整備

障害者に提供される福祉サービスの質を確保し、さらに向上させるための環境整備が進められました。
福祉サービスを提供する事業者への支援も拡充され、サービスの質が向上することで、障害者の生活がより豊かになることが期待されています。

4. まとめ

日本の障害福祉制度は、時代とともに変遷を遂げ、障害者に対する支援が大きく拡充されてきました。
しかし、財源問題や地域間格差、障害種別による支援の不平等など、まだ解決すべき課題が残されています。

 

参考記事

WAM NET「障害者福祉制度解説」、https://www.wam.go.jp/wamappl/seidokaisetsu.nsf/vdoc/syogai_01?Open (最終閲覧2024年10月3日)

弁護士法人AURA『図解入門ビジネス 障害者総合支援法がよ~くわかる本〔第7版〕』(2023年12月、秀和システム)

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