相続をめぐるトラブル・紛争5選
1. はじめに
相続とは、亡くなった方が生前に築いた財産や権利を、その家族や親族が引き継ぐための手続きです。
しかし、この相続には多くの手続きや決定事項が伴い、場合によっては相続人同士で意見が対立し、トラブルや紛争が発生することがあります。
特に、遺産の分配や相続人の特定に関しては、感情が絡みやすく、家族間の関係が悪化することも珍しくありません。
この記事では、相続に関するよくあるトラブルや紛争の事例を5つ紹介し、それぞれの原因と解決策について詳しく考えていきます。
これらの事例を知ることで、相続に関する知識を深め、将来的なトラブルを未然に防ぐための参考にしていただければ幸いです。
2. トラブル・紛争1: 遺産分割の不公平感
事例
Aさんの父親が亡くなり、兄弟姉妹と共に遺産分割を行うことになりました。
しかし、Aさんは兄弟のうち一人だけが多くの財産を受け取ることになったと感じ、不公平だと強く主張しました。
兄弟間で遺産の価値や配分に大きな差が生じ、話し合いは平行線をたどりました。
原因
遺言書が存在しない場合や、遺言書に具体的な財産分配の指示が明記されていない場合、相続人同士の話し合いで遺産分割を決めることになります。
この場合、財産の種類や価値に偏りがあると、ある相続人に対して不満が生まれやすくなります。
例えば、不動産の価値が高く、それを特定の相続人が取得するとなると、他の相続人が現金などでその差を補填する必要が生じる場合がありますが、これが不十分だと不満が募ります。
解決策
遺言書を作成する際には、財産の種類や価値をよく考慮し、分け方について具体的かつ明確な指示を残すことが大切です。
例えば、不動産や現金、株式などの異なる財産をどう配分するのか、相続人間で不公平感が生じないように細かく指定しておくと、トラブルを防ぐことができます。
また、遺言書を作成する際には、専門家に相談し、法律的な視点からも公平な分配方法を提案してもらうことが有効です。
3. トラブル・紛争2: 遺留分をめぐる争い
事例
Bさんの母親は、遺言で全財産を一人の子供に残すことを決定しました。
しかし、他の子供たちは、この決定が自分たちの正当な権利を侵害していると感じ、遺留分を主張し、裁判を起こすことになりました。
遺言書の内容を巡って兄弟間で深刻な対立が生じました。
原因
日本の民法では、一定の親族には「遺留分」と呼ばれる最低限の相続権が法律で保障されています。
これは、特定の相続人が遺言によって全財産を受け取ることになったとしても、他の相続人が遺留分を請求する権利があることを意味します。
この遺留分が侵害された場合、相続人が不満を抱き、裁判などの法的措置に至るケースが少なくありません。
解決策
遺言書を作成する際には、相続人の遺留分を考慮に入れた内容にすることが重要です。
特に、特定の相続人に多くの財産を渡す場合、他の相続人とのバランスを取るための配慮が必要です。
また、遺留分をめぐる争いが発生した場合には、感情的な対立を避け、専門家のサポートを受けながら冷静に対応することが求められます。
調停や裁判に進む前に、弁護士や行政書士に相談し、法的手続きを進めるのが一般的です。
4. トラブル・紛争3: 相続税の負担
事例
Cさんの家族は、父親の遺産として大きな不動産や株式を相続しました。
しかし、その遺産にかかる相続税が予想以上に高額で、現金が不足していたため、税金の支払いが困難になりました。
この結果、家族は相続した財産の一部を手放す必要が生じました。
原因
不動産や株式などの資産は、現金に比べて価値が大きい場合があります。
その一方で、これらの資産が多くを占めると、相続税の支払いが現金で不足することがあります。
また、相続税の計算方法について十分な知識がない場合、税負担の大きさに驚くことが多く、適切な準備がないとトラブルに発展することがあります。
解決策
相続税対策として、生前に現金化しやすい資産を増やす、生命保険を活用する、贈与税を活用して財産を分散するなどの方法があります。
これにより、相続税の支払いがスムーズに進むような対策を講じることができます。
特に、相続財産が不動産などで現金が少ない場合は、事前に専門家と相談し、最適な節税方法を検討することが重要です。
これにより、相続税による財産の減少を最小限に抑えることが可能です。
5. トラブル・紛争4: 相続人の特定
事例
Dさんの父親が亡くなり、相続手続きを進めていたところ、突然、知らない遠縁の親戚が現れ、「自分も相続人だ」と主張しました。
この親戚は、以前は家族と関係が薄かったものの、相続に関して突然権利を主張するようになり、手続きが複雑化しました。
原因
相続人を特定する際には、戸籍の確認や家族関係の整理が重要です。
しかし、遠縁の親族や認知されていなかった子供がいる場合、相続手続きが複雑化し、相続人同士の関係が悪化することがあります。
特に、家族関係が複雑な場合や、相続人が知らない間に増えていたケースでは、トラブルが生じやすいです。
解決策
相続手続きの前に、家族関係を明確にし、相続人を特定するための準備を行うことが必要です。
戸籍謄本や関連書類を事前に整理しておくことで、相続手続きをスムーズに進めることが可能です。
また、相続人間での誤解やトラブルを避けるために、事前にすべての相続人と連絡を取り、手続きに対する合意を得ておくことが重要です。
6. トラブル・紛争5: 共有財産の管理
事例
Eさんとその兄弟は、父親の遺産として大きな土地を相続しました。
しかし、その土地をどう活用するか、売却するか、またはそのまま保有するかについて意見が割れ、兄弟間での話し合いが難航しました。
結局、話し合いがまとまらず、土地の管理が滞ることとなりました。
原因
相続財産が共有される場合、全ての相続人の合意がなければ、財産の管理や処分が困難です。
特に不動産のような大きな資産では、活用方法についての意見の食い違いが生じやすく、トラブルに発展しやすいです。
また、共有財産が多くの人によって管理される場合、全員が同じ意見に賛同するのが難しいため、対立が起こりやすくなります。
解決策
共有財産を分割するか、売却して現金化することで、相続人同士の対立を回避することができます。
また、共有者同士であらかじめ管理方法や活用方法について話し合い、合意を形成しておくことが重要です。
相続開始後に慌てて話し合うのではなく、事前に意見交換をしておくことで、トラブルを未然に防ぐことができます。
7. まとめ
相続に関するトラブルや紛争は、事前の準備と予防策を講じることで、多くの場合回避できます。
遺言書の作成、専門家との相談、そして家族との事前の話し合いを通じて、適切な対策を取ることが大切です。
特に、相続は感情的な問題も絡むため、冷静で客観的な判断が求められます。
相続を円滑に進めるためには、早めの準備と家族間のコミュニケーションが欠かせません。
参考記事
弁護士法人サリュ「遺産相続トラブル事例15選|トラブル対策・対処法まで徹底解説」
https://legalpro.jp/souzoku/14861/(最終閲覧2024年10月3日)
三菱UFJ銀行「遺産相続でトラブルになるケースとは?事例と対策を紹介」
https://www.bk.mufg.jp/sonaeru/souzoku/column/012/index.html(最終閲覧2024年10月3日)